近頃ネットのニュース記事を見ていると、つみたてNISAやらiDeCoやらで資産運用を進める内容がかなり多くなってきた。
いずれも財政破綻が現実的になりつつある、日本国が個人で資産を形成することを促すための制度であるが、どれを見ても必ず入っているキーワードが「分散投資」という言葉だ。
「投資と言えば分散投資」と言われるほど投資の基本原則であるが、世間的に認知されている分散のあり方には少々疑問を感じることがある。
今回は分散投資に対する考え方を書いていこうとおもう。
1. 分散投資は効果的だけれども・・・
結論から言うと、投資における分散投資は必要であるが、ほどほどにすべきというのが個人的な見解だ。
よく言われるように「卵を一つの籠に盛るな」という格言がある。
一つの籠に卵をのせていたら、籠が落ちた時にそこに入っている卵がすべて落ちて割れてしまうということだ。
これを防ぐためにいくつかの籠に分散しましょうというお話である。
確かに株式や債券などの投資の知識をあまり持ち合わせていない個人投資家の場合は、とりあえず投資信託をメインに投資していれば、分散投資することは可能だし、それが効果的なのも理解できる。
しかし、分散投資とは「ローリスク・ローリターン」であることを心得てほしい。
投資において、リスクを最小限にしてリターンを狙うというのは正しいやり方だ。
それは否定できないし、僕自身もそうおもう。
ただ、株式にしろ債券にしろ(他の不動産REITなども含めて)値動きというものがあるわけで、それは上昇するときもあれば、下降するときもある。
さらにそれらの中にある外国株式や国内債券などは各国・各企業ごとの経済状況に左右されていく。
例えば、日本国内企業が不景気で株価が下降気味だが、そのときに米国企業の株価は軒並み上昇傾向という状況だとする。
この場合、どちらにも分散投資していれば、国内がダメでも米国側の景気を享受できる。
だから分散投資は必要だと考える人がおおいだろう。
しかし、こうも考えられないだろうか。
国内株に投資していた分を米国株に投資していたら、その分の利益を享受できた、と。
本来取れるはずの利益を失ったと言い換えることもできる。
投資はいかに損しないかではなく、いかに最低限の損失で利益を得るかということが大事だとおもっている。
だから、分散投資は効果的ではあるが、本来得るべきの利益を失っているという視点ももってほしい。
2.バランス型ファンドの効果とは
つみたてNISAやiDeCoでオススメされている商品の大半がバランス型ファンドと呼ばれる商品だ。
それらの多くが全世界の企業銘柄の株式や債券、不動産に少しずつ投資するというもので、個人投資家でも気にすることなく、分散投資できるというものだ。
例えば以下のような商品はつみたてNISAで今買うべき投資信託として紹介されていることが多い。
・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
・eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー)
・eMAXIXSlim(8資産均等型)
・<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(6資産均等型)
いずれにしても個人的にはあまりオススメできない。
理由としてまずは上2つの全世界型株式投資について述べてみたい。
いずれも米国株への投資割合が約50%程度を占めており、米国以外の銘柄に投資する意味はないからだ。
これまでの経験上、世界的大暴落が発生した場合に米国企業の株価は軒並み下落することになる。そして、その米国経済の状況は日本然り他の国々にも波及していく。米国が大暴落中に他の国々の株価(個々の企業ごとではない)は間違いなく、同様かそれ以上に下がる。
逆に真っ先に米国が経済状況が回復し、株価が上昇しても日本やドイツなどの国が同様に回復するかというとそうでもない。現に2018年の10月ごろから3ヶ月程度は世界的な株安状態が続いた。そして2019年に入り、徐々に米国経済は回復していったが、日本国内株の回復が見られたのは2月に入ってからだ。
これはリーマン・ショックのときも似たような現象だった。
不況からいち早く脱却するのは米国だし、他の国はしばらく不況が続くことが多い。
だから、全世界の株式銘柄に分散投資するのではなく、米国中心に投資する方が良いだろう。
そして次に資産バランス型ファンドについて。
分散投資の効果を引き上げるのはこのように様々な資産に投資することだ。
上記で紹介した資産バランスファンドは、一見この考えに即しているように思えるが、実はそうではない。
なぜなら資産配分が同じ割合ずつのポートフォリオで形成されているからだ。
確かにこのように各資産(国内外株式・国内外債券・国内外不動産など)にバランスよく同じ割合でポートフォリオを組めば、分散効果は望めるかもしれない。
しかし、前述の全世界株式と同じで、値動きが大きく下がった時には最小限に抑えることができるが、投資先の調子が良く、株価や地価が上昇しているときにも他のファンドに比べて投資割合が少ないため、得られる利益も少なくなる。
なるべく投資額を減らさず、元本から少しの利益で満足と言うならこの資産バランス型は最適かもしれない。
しかし、大多数の人は投資した金額以上に儲けたいと考えるはずだ。
そう考えると、資産バランス型ファンドはあまりオススメできない。
3.リスクを承知で投資に挑むこと
投資に絶対はあり得ない。多少なりともリスクを背負う必要はある。どうせリスクを背負うなら、リスクに対するリターンの割合が大きい投資をすべきだ。
何もハイリスク・ハイリターン投資を薦めているわけではない。
例えば、基本は米国株式をメインにし、それとは相関係数の低い国内REIT(不動産)などに投資しておけば、株価の調子が悪くてもその影響が比例して受けることはないだろう。
分散投資は投資の基本ではあるが、同じ資産(株式なら株式だけ)に分散してもあまり期待できない。
それぞれ異なる資産配分を自ら考え、時には配分を見直すなど状況に応じて投資先を変えることも大事だ。